前回は「チーム全体の対話で共通の目的を作る」ことを紹介しました。
しかし、チームの目的を作っただけでは、
メンバー一人ひとりが「自分ごと」として捉えることは難しいのが現実です。
「チームの目標はわかるけど、自分には関係ない」「どう動けばいいかわからない」と感じるメンバーも少なくありません。こうした状況では、チームとしての成果が出にくく、マネージャー自身も悩んでしまいますよね。特に女性管理職の方は「共感的に聴くのは得意だけど、どうチームの目的につなげるかに悩む」ことも多いと感じます。
そこで今回は、チームの目的と個人の動機をつなぐ場としての1on1に注目します。
1on1では、マネージャーが個々のメンバーの考えや価値観を丁寧に聴き、チームの目標と個人の動機を結びつけることで、「自分の仕事はチームにどう貢献できるのか」が明確になります。私もマネージャー研修で多くのチームをサポートしてきましたが、このプロセスがあるチームほどメンバーの主体性や納得感が高く、結果として成果が安定しやすいことを実感しています。
この方法を取り入れることで、メンバーは自分の役割や行動の意味を理解でき、チームとしても個人としても成長を実感できるようになります。結果として、マネージャーは「メンバーが自分で考えて動いてくれるチーム」を作ることができ、日々のマネジメントのストレスも軽減されます。
今回は1on1のポイントについて具体的な事例も含め解説していきます。
なぜ1on1が必要なのか
前提として認識いただきたいこととしては、
チームの目標と個人の動機の紐付けはマネージャーの重要な役割であるということです。
チームの目的は共通でも、個々のメンバーが「自分には関係ない」と感じていたら、行動や意思決定にばらつきが出ます。1on1では、チームの目的を一人ひとりの役割や目標に紐づけ、個人の理解や納得感を引き出すことが可能になります。
では、良いチーム作りになぜ1on1が必要なのかをまずは知って行きましょう。
①チーム全体の目的を追うことが個人にとってどんなメリットがあるかわからないから
多くのメンバーは「チームの成果が出る=会社にとって良いこと」という認識は持っていますが、
「それが自分にどう返ってくるのか」が不明確なまま動いていることが少なくありません。
その結果、「自分の評価につながるのか?」「成長機会になるのか?」といった疑問が解消されず、
仕事への動機づけがされないのです。
1on1では、チームの目標が個人のキャリアや学びにどうつながるかを対話を通じて整理できます。
たとえば「今回のプロジェクトは交渉力を磨くチャンスだよ」「この経験は次のポジションに役立つ」といった具体的なメリットを提示をすることで、チームの目的が“自分ごと”として腹落ちしやすくなるのです。
②個人が仕事をする目的は言語化できていないことも多いから
「なぜこの仕事をしているのか」「何を大切に働きたいのか」といった問いに、
即答できる人は意外と多くありません。
日々の業務に追われる中で、深く考える機会がないからです。
しかし目的が言語化されないままでは、やりがいを感じづらく、
結果として“作業”に終始してしまいます。
1on1は、こうした内省を促す絶好の場です。
マネージャーが問いかけを通じて「どういう時にやりがいを感じた?」「今後どんな経験を積みたい?」と引き出すことで、本人が自覚していなかった価値観や目標を整理できます。
目的が言語化されると、自らの選択や行動に一貫性が生まれ、仕事に主体性が増すだけでなく、チームに対しても前向きに関わりやすくなるのです。
チームの目的と個人の動機を紐付ける1on1のステップ
ではここからは、
メンバーとの1on1の進め方をステップで解説していきます。
ステップ1:1on1の時間の目的を伝える
まず大切なのは、1on1の「意図」を明確にすることです。
単なる業務確認や雑談の時間と思われてしまうと、メンバーは身構えてしまったり、
逆に期待を持たずに受け身になってしまいます。
「この間はチームの目的を考えたけど、その目的を追うことがあなたのキャリアや成長にとってどういう意味があるかを一緒に考える時間にしたいよ」と伝えることで、
メンバーは「自分のことを考えてくれる場なんだ」と理解できます。
結果的に、1on1は“管理”のためではなく“成長”のための対話として捉えられ、
安心感と積極性が生まれるのです。
ステップ2:この場におけるメンバーのマインドセットをする
1on1を有意義な時間にするためには、メンバー自身の心構えも大切です。
この時間は「上司に評価されるための場」ではなく、「自分の考えや気持ちを整理して言葉にする場」と捉えてもらうこと、だから素直な気持ちを教えて欲しいことを伝えましょう。
メンバーが評価される場と捉えていた場合、「完璧な答えを出さなきゃ」と思ってしまうかもしれません。
大切なのは、頭の中にあるモヤモヤや疑問を率直に出すことです。
マネージャーがその姿勢を後押しできれば、1on1はメンバーにとって自己理解を深める貴重な時間になります。
ステップ3:チームの目的に対し、メンバーがどう成長をしていきたいか聞く
1on1では、チームの目的とメンバーの個人目標を「対話の中で橋渡し」することが大切です。
共感力や傾聴力は、1on1を成功させる上で女性管理職が持ちやすい強みです。
ただし、共感に寄りすぎて相手の気持ちを受け止めるだけで終わってしまうこともあるので、具体的な問いかけ例も含めみていきましょう。
たとえばチームの目的が「顧客満足度の向上」だとします。このまま伝えると抽象的で、“会社のため”としか感じられないかもしれません。
そこで、メンバーにこんな問いかけをしてみます
- 「この目的に取り組むことは、あなたの強みをどう活かせそう?」
- 「今のあなたのキャリアの中で、この目的とつながる部分はどこにある?」
- 「この取り組みを通じて、どんなスキルを伸ばしたいと思う?」
こうした質問を投げることで、メンバーは「顧客満足度の向上」という組織目標を、
“自分の成長”や“自分の価値発揮”と結び付けて考えられるようになります。
例えば、あるメンバーが「コミュニケーション力をもっと磨きたい」と思っていたなら、
「顧客満足度を上げるために、相手のニーズを引き出す会話を意識する」ことが、その人の個人目標ともリンクします。
つまり、 「チームの目的 → 個人の強みや成長課題 → 日常の行動」 という流れを対話で描けると、
目的が“自分ごと”に変わり、モチベーションにつながるのです。
ステップ4:次いつまでにどんな事をメンバーが頑張っていくか、 そこに対しマネージャーの支援内容について目線を合わせる
最後に重要なのが、行動の具体化と支援の合意です。
「じゃあ次の1か月で取り組んでみることは何か?」
「そのためにマネージャーとしてどんなサポートが必要か?」を明確にすることで、
継続的な成長支援の機会になります。
このプロセスを通じて、メンバーは「自分は応援されている」と実感でき、
マネージャーにとっても支援の方向性が明確になります。
結果として、行動が加速し、1on1の効果を確実に成果につなげられるのです。
まとめ
チーム全体で「共通の目的」を作っても、それだけではメンバー一人ひとりが目的を自分ごととして捉えることはできません。そこで重要になるのが、個別1on1でチームの目的と個人の動機をつなぐことです。
1on1を効果的に進めるには:
- まずは「この時間の意味」を伝えて、メンバーにとってのメリットを感じてもらう
- メンバーが安心して話せるマインドセットを整える
- チームの目的と、自分自身の成長や強みをどうつなげられるかを問いかける
- 次回までに取り組む小さなアクションと、マネージャーとしての支援をすり合わせる
このサイクルを繰り返すことで、メンバーは「チームの目的=自分の成長の機会」と感じられるようになります。その結果、チームの目標達成が“やらされ仕事”ではなく“自分の挑戦”に変わり、モチベーションも一体感も高まります。
👉 チーム対話で「共通の目的」を作り、1on1で「個人の動機」とつなぐ。
この2つを組み合わせることで、女性管理職として、自分らしい1on1の形を築くことは、チームの成果だけでなく、あなた自身のリーダーシップの確立にもつながります。
次回は、さらにその一歩先として「日常のフィードバックで行動を支える」方法について解説していきます。
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